日本健康同盟(略称・健康同盟)
Page9(2005年3月3日記載)
[21世紀の統合医療システム」のメディカル・モールの新規性(進歩性)の件(その7)
【 メディカル・モ−ル設立趣意書 】 ( 補足説明作成に当たり )
★ 印:リンク
標記の件を考慮する上で必要な資料−その7:
2000年9月
● 新規性(進歩性)の件 「健康同盟」世話人・酒 井 洋 明
○「インフォ−ムド・コンセント」(著者・東大名誉教授・森岡 恭彦・NHKブックス版・
1994年初版)より。
●はじめに:1960年代後半:アメリカを中心にして公民権運動が盛んになり、患者の人権
擁護、患者の自己決定権の尊重という視点から、医療におけるインフォ−ムド・コセント
(informed consent)が強調され、また此の考え方を基にしてガンの告知
の問題が一般の社会の中で取り上げられる様になった。また医師に対する訴訟も増加してきて、
古くより考えられていた医師と患者の人間愛に基づく医療は次第に影をひそめつつある。
□わが国でも欧米流に、患者の人権とかインフォ−ムド・
コセントに関する意識が浸透しつつある。
●「インフォ−ムド・コセントとは何か」:
医師が患者にその病状をよく説明し、それに応じた検査や治療について十分な情報を提供し
、患者 はそれを十分に理解し承諾した上で、誰にも強制されない自由な立場で検査や治療
法を選び 取り、その同意に基づいて医師が医療を行う、といった医療上での原則を意味する。
□つまり「十分な説明を受けた上で、患者は納得・同意して検査や治療を受ける原則」
が医療において不可欠だとする考え方である。
●1972年、アメリカ病院協会が世に出した宣言★:
「患者の権利章典(Bill of Rights)」に関する宣言・
American Hospital Association Statement on a Patient's この権利章典では−−−
□「患者は思いやりのある、かつ鄭重なケアを受ける権利がある」
「患者は担当医師から、みずから理解することを合理的に期待し得る言葉で、
その診断、治療及び予後に関する完全な現在の情報を取得する権利を
有する−−−」など、
など「患者」を「主語」にして、患者の守られるべき権利が事細かく述べられている。わが
国でもこれに遅れる事20年、ごく最近になって「日本病院協会」がこのような病院章典を示して
いる。 (要・調 査=酒井)
●1983年、アメリカの「生命倫理に関する大統領委員会・
President's Commission for the Study of Ethical Problems in Medicine and
Bio-medical and
Behavioral Research 」の報告書:
此の報告書では患者の人権擁護の立場から、医療における患者の自己決定権の尊重・
Self-determination Principle
そして「インフォ−ムド・コセント」が医の倫理の基本であるとする考え方を強調している。
そしてこれがアメリカ以外の西洋諸国に拡がり、日本にも波及してきているのである。
●「インフォ−ムド・コセント」に基づいて医師は患者に「何を」「どう」伝えるか:
1 患者の病名や病状
2 予想される検査や治療についての目的や内容
3 とくにそれにより予想される結果やそれに伴う危険性
4 予想される治療行為以外に方法があるのかどうか
5 検査や治療を受けない事により予想される結果
□医師の説明と患者の納得と同意:とくに近年では、 検査や治療も多様化し、
複数の検査や治療法が考えられ、
その選択がなされる事が多くなってきた。
● 生きている間の 「生活の質」★・quality of life
が大切かどうか(患者の観点)
→酒井註:生活の質だけの問題ではない。どの治療法が自分に合うかどうかは、
自己を深く内省しつつ決定する側面があるのだ。
○1992年、医療法の改正;日本政府も「インフォ−ムド・コセント」の精神を尊重する
事をうたっている:
□政府は医療関係者と患者との間の信頼関係をより促進する為「医療の担い手が、医療を提供
するに当たり、適切な説明を行い、医療を受ける者の理解を得るよう配慮することに関し検討
を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする」とし、その検討が進行しており、
将来は医療法の中で(「インフォ−ムド・コセント」が)明示される事になろう。
●1990年、「日本医師会」★の「生命倫理懇談会」★が出した
「『説明と同意』についての報告書」:
「わが国でも多くの困難を乗り越えて、医療の場における新しい人間関係を築いていく為に、
医師はこの『説明と同意』を真剣に考え、それを受け入れるように一歩一歩
努力していかなければならないとし、その必要性を強調している。
更に、「医師には、説明義務があるとともに裁量権がある。他方で、患者には、
真実を知る権利と自己決定権がある。
この両者の均衡をどうとるかは、現実の問題として極めて難しい」
として、これは医師の英知に待つところ大としている。
また「わが国のこれまでの医療の歴史、文化的な背景、国民性、国民感情などを十分に考え
ながら、わが国に適した『説明と同意』が行われるようにしたいものである。」
と結んでいる。
□これを読むと、まず気になるのは、
「インフォ−ムド・コセント(説明と同意)」は患者の人権尊重というより、
むしろ医師と患者との信頼関係の基礎 を築くうえで必要な原則としており、
また同じインフォ−ムド・コセントといってもアメリカ流と日本流とは違ったもので、
アメリカ流のものをそのままわが国に受け入れる必要はないとしていることである。
(著者は「契約医療」という冷たい人間関係の産出、医療訴訟の回避といった側面がある
アメリカ社会を医師会は批判している、とコメントしている。)